2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

023−タクシー

『思い込み』というのはよくあることなのですが、『思い込まれ』という経験は意外と少ないものです。 三十四、五歳の頃、日出にある知人の工房での用事を済ませ、降りだした雨の中を愛車の黒のトヨタ・カルディナでそこを出たのが夜の九時頃でした。国道10…

022-鳥

私はなぜか昔から神社が苦手なのですが何の因果か年に1、2回、どういう訳か、ある神社に参拝する破目になってしまうのです。その神社は由緒正しき神社(正確には神宮なのですが)で敷地もたいそう広く、参拝を終えるとその辺を散策し、それなりに魂の浄化…

021-ウニ

人は初めて目にするものや意味がわからないものには不安や恐怖を感じてしまうものです。その日は仕事の関係で帰宅が夜中の十二時近くになり、すでに床についている妻を起さないように小さな電気の明かりで寝巻きに着替え、いざ寝ようとした時です。何気なく…

020−河童

20代後半の夏、友人3人でドライブに行った時の話しです。どこを目指すということもなく、適当に車を走らせていたのですが、昼にはまだかなり時間があるというのにどこかで食事をしようと言うことになりました。すでにT市には入っていたのですが繁華街に…

019-消滅 2

私は滝を観賞するのが好きで、特に安心院の東椎谷の滝には年間二十回近くは行くのですが一人で行くのもつまらないので大抵、誰かと一緒なのです。その日も作家のTさんが同行してくれました。心行くまで滝を堪能した後、帰路に付いたのが午後四時を少し過ぎ…

018-デコボコ

アトリエから高崎山の脇にある銭亀峠を下って別府の流川通りにぬける道を利用すると、およそ二十分で別府に行くことが出来ます。大分の市街地に出るのにもその位の時間が掛かりますので、途中に少々狭い所もあるのですが別府に用事があるときは必ずその道を…

017-蜘蛛

人の想念や思念と言うものは本人が意識する、しないに係わらず、ありとあらゆる物や事柄との関係に微妙なバランスを保ちながら目に見えない形でシンクロしているような気がします。生活の拠点である〝家〟ともなると、それは時として眼に見える形をとること…

016−ニワトリ

これは不思議な話と言うよりはどちらかと言うと怖い話です。高校二年生のときの話です。その頃ケンタッキーフライドチキンがあったのかどうか良く覚えていませんが、休み時間に何故か鳥の唐揚げの話で盛り上がり、その内H君が唐揚げを私にご馳走すると言い…

015−石

高校1年の夏の終わりから秋の始めの頃の出来事です。私の通っていた高校は美術と音楽を専門に学ぶ、当時としては比較的珍しい高校でしたので全国から生徒が集まっていました。中でも大阪から来ていたM君とは妙に馬が合い、いつも行動を共にしていたのです…

014−磁力

いとこのS君が体に磁力を持っていることは成人してから知りました。人には微量な磁力があるらしいのですが、彼の場合、微量とはいえませんでした。本人が言うには子どもの頃から自分の磁力には気づいていて、床に落ちた画鋲や針は指でつままずに指先にくっ…

013−ガウン

二十六歳の時に急性胃炎で一ヶ月あまりの入院を余儀なくされたことがあります。私の病室は二階にある個室で部屋の両サイドにも個室があり、一般の病室から少し離れているせいもあって比較的静かで結構自由な入院生活を送っていました。といっても楽しいのは…

012−消滅

突然、目の前のものが消えてしまった経験は誰にも一度や二度はあると思います。今まで使っていたはずの消しゴムがどこにも見当たらないとか、さっきまでそこにあったはずの百円ライターがなくなってしまったとか…。 私は一時期、福岡で造形の仕事をしていた…

011−メロン

記憶違いというのは誰にでもあるものですが、それを長期にわたって記憶違いし続けていた場合は、それが間違いだと気付いてもしばらくは受け入れられないものです。義理のお兄さんは一昨年まで〝菅原文太〟を〝すがわらもんた〟と記憶違いしていましたが、そ…

010−タバコ

タバコで思い出しました。今はほとんど無理なのですが、20代前半の頃はかなりの確立でタバコを立てていたように思います。タバコを取り出そうとして、うっかり落としてしまったタバコが床の上でフィルターを下にして偶然直立したのをきっかけに、頻繁にタ…

009ー会釈

大分には大野川という一級河川があり、大野川のスズキ釣りに凝っていた時期があります。大野川にはスズキが多く生息していて、巨大な物になると1メートルを超えるものもいます。ちなみに現時点での大野川での最高記録は108センチだそうです。 若い頃には…