471−マジシャン

小さい頃の夢はマジシャンになることでした。当時はマジシャンではなく手品師と言っていたのですが、初代引田天功辺りからマジシャンという呼び方がメジャーになって来たように思います。たまたまテレビで見たマジックショーに感動したのと、たまたま近所にマジックを趣味にした中学生がいたということもあって、俄然マジックに興味を持つのですが残念ながら元々あまり賢くない方ですからマジックと念力の違いが良くわかっていませんでした。

その辺を面白がってその中学生も私をからかうものですから完全にマジシャンとは超能力者のことだと思い込んでしまいます。
そんなある日の事いつものように例の中学生のマジックを見せてもらいながら感動していると、私にもやってみろと言いながらピンポン玉より一回り小さなスポンジで出来た赤い丸い玉を渡されます。

その日の中学生のマジックは右手の中に握った赤い玉が気合いもろとも左手に移動するというものでしたので私もそれを真似て赤い玉を右手に握るのですが種や仕掛など全く頭にないですからただひたすら移動する事を念じるだけです。そんな時、突然中学生が「ハイ!」と大声を出した後「玉はすでに左手に移動している」と言うものですから恐る恐る右手を開いてみます。

するとなぜか右手の赤い玉は消滅していて何と半信半疑で開いた左手に赤い玉が移動していたのです。その時は中学生のパワーが私の手のひらの中で作用したのだとばかり思っていましたから感動というよりは感心していたのですが中学生は明らかに動揺していました。

「も、もう一回やってみて」と言われその後同じ事を20回以上やらされましたが二度と同じようには出来ませんでした。それが中学生のマジックだったのか今でもわかりませんがその後その中学生がマジックを見せてくれる事はなくなりました。


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