453−贈り物(後)

何故かその鉈(ナタ)を手にしてからというもの目に見えて運気が上がります。そのことを親しい友人に話した所、普段はほとんどそんな抽象的な言い回しをしない友人から思いもかけない言葉が返ってきます。

「アイテムが揃ったじゃない。後は鏡だけだね」友人は『三種の神器』と準えたのでしょうが実は私も同じ事を考えていました。剣と勾玉と鏡を三種の神器とするなら鉈という『剣』を頂く一月前に産まれた子犬が『勾玉』でした。自分的には勾玉の形は命の形だと考えていたのです。

絶好調の運気の中で最後のアイテムである鏡が手に入らない事に内心焦りつつ、結局好調の運気の中で鏡を手にする事がないままその奇跡のような幸運期を何故か自らの意思で放棄することになるのですが、今になって思うとその本来の自分を見失うまいとして見せかけの幸せを放棄するという行為こそが最後のアイテムである『鏡』だったのではなかろうかと感じています。

結果的にはそれまでの幸運とは比べ物にならない幸せを手に入れるのですが、不思議だったのはその鉈がある日突然に消滅するのです。後に全く見当違いの森の中に捨てられた自動車の中で偶然見のですが、その自動車のドアは錆ついていてドアを開ける事すら出来なかったのです。


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