351−エリザベスカラー
ムーンちゃんが子犬を7匹産んだのは数年前のことです。
4匹は里親に貰われて行ったのですが結局サンちゃんとナナちゃんとハチ君の3匹が残る事になり今でも家には母親のムーンちゃんを筆頭に4匹のワンがいます。
その子犬達がまだ2ヶ月目位の時の話です。
ハチ君が後ろ足を骨折して手術するのですが、傷口が完治するまでは他のワンと別にしなければならないと言うことで仕方なくハチ君だけを家の中のサークルで1カ月生活してもらいました。
その時に傷口を舐めると良くないと言うことで『エリザベスカラー』というプラスティックのラッパのようなものを首に着けるのですが、恐がったり嫌がったりするのでほとんど付きっきりの生活でした。
3週間ほど外のワン達とは顔を合わせていなかったものですから外のワン達の間で部屋の中で特別扱いされているハチ君に嫉妬の様なものが生まれて激しく吠えるようになります。
『出てこい』もしくは『顔くらい見せろ』というのです。
あまりにもウルサイのとハチ君の傷も随分良くなっていたのと、そろそろ外のワン達との生活に戻る準備もしなくてはならないということもありハチ君を抱えて外に出てみました。
ところがハチ君の姿を見た途端、ワン達が固まります。
あれだけ吠えまくっていた4匹のワンがピタリと黙ったのです。
ハチ君を下ろすとハチ君は照れたようにはにかみながら他のワン達にゆっくり近づくのですがその照れた感じで首を振った時の首のエリザベスカラーの動きに恐怖したのかワン達は突然「キャイン、キャイン」と悲鳴を上げながら逃げまどうのです。おそらくワン達はハチ君とは別の生き物だと思ったのでしょう。
その怯えようが尋常ではないのがおかしくてたまらなかったのですが、それからというもの騒がしい時にはエリザベスカラーを見せるだけで静になるようになりました。
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