457−まゆげ

福岡時代の友人M君の体験談です。M君は高校時代野球部に所属していたのですが、今で言う『ツッパリ』まで行かないまでも結構ヤンチャな生徒だったようで眉毛をカッコ良く整えるのが日課だったようです。

普段は注意されなかった眉毛なのですが些細な事がきっかけで数人の野球部の生徒達と一緒に監督の怒りを買いM君の眉毛もトバッチリを受けます。「M!その眉毛は何だ!明日までにチャンとしてこい!」チャンと、と言われても一日で毛は生えてきませんから困ったM君はどうして良いか解らず反省の意思表示つもりでツルツルに剃って行きます。

それが監督の逆鱗に触れ「明日までに眉毛を生やしてこい」と無理難題を仰せつかります。さすがに困り果てたM君は母親に相談するのですがそこは母親です。いつも自分が使っている眉墨でM君の眉毛を再生してくれたそうです。自信満々で登校したM君だったのですが何故か監督の更なる怒りを買います。

「何だその眉毛は、俺をバカにしているのか!」M君の眉毛は前よりも細く、どこかのマダムのような大きく弧を描いた眉毛に仕上がっていたのです。とうとう監督にマジックインキで眉を描かれるのですが、その眉毛は極太で左右のバランスもメチャクチャだったそうで、その日は校内中の笑い者だったと言います。

次の日からは毎朝自分でマジックインキの眉毛を描いて行ったらしいのですが不思議な事に3日もすると誰も眉毛のことに触れなくなり、それが当たり前のようになったそうです。M君に言わせるとそれが一番悲しかったと言います。


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