134−ファンタグレープ

勘違いといえばこんなこともありました。

最近ではあまり見かけませんが、昔、ビンの『ファンタグレープ』というのがあって、福岡で造形の仕事をしているときの休憩時間によく飲んでいました。

当時、自動販売機の中身は『缶』が主流になっていたのですが、たまたま近所に『ビン』の販売機が残っていたものですから懐かしさからほとんど毎日飲んでいました。

その日の3時の休憩時間もその辺の作業台の周りに何人かが集まってファンタグレープを飲みながら雑談をしていたのですが、ある時点からジュースの味が変わるのです。

それでも2口、3口飲んで確認しますがいつもの甘さがないのです。

どうしたのかと思いながらも更に飲み続けていると、突然横にいた工場長のMさんが叫びます。

「何を飲んでいるのですか!それ、促進剤ですよ!」(本当は福岡弁です。ナンバノンドルトー!ソレバ、ソクシンザイバイ!見たいな感じです)促進剤というのは液体状のプラスティックの硬化を早める時に使用する紫色の液体で、誰かがファンタの空き瓶に小分けして作業台の隅に置いていたようなのです。

促進剤の入ったファンタのビンを握り締めたまま作業台の上にある本物のファンタグレープと見比べるのですが、ほとんど同じ紫色に感動している余裕もないくらいの違和感が突然喉の奥に広がります。

硬化剤を飲んでいませんので促進剤だけでは硬化はしないのですが体には良くないのは事実です。

Mさんに連れられて近くの病院に行くのですが、病院の医師にその説明をするのが大変でした。

促進剤の説明から始まって気がついたらディズニーランドの話になっていましたが結局、胃の洗浄をしていただき事なきをえました。

もしあの時Mさんが気づいてくれなかったらビンの半分くらいは飲んでいたと思います。

ちなみに促進剤は甘いのです。


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