399−目覚まし時計

物によっては本来の使い方をしなくても十分に目的を果たす事ができるということを知ったのは新婚間もない頃です。就寝の際には妻がベッドで私は畳の上に布団を敷いて寝ていたのですが目覚まし時計は私の布団が敷かれた壁際のタンスの上に置いていました。タンスと言っても引出しが3〜4段の背の低いオシャレなチェストなので手を伸ばせば良い感じで目覚まし時計に手が届きました。

新婚ということで人並みに夢も希望もありますから目覚まし時計ひとつにもこだわりがあって、当時の目覚まし時計はアンティークなテイストを残しつつオシャレでなおかつカワイイデザインの物ということで大きな円形の文字盤の上の方に大きなアナログなベルが2つ付いた結構な存在感のある目覚まし時計でした。

朝、目覚ましのベルを止めるのは私の役目だったのですが、その日は「チーン」という軽やかな音で目が覚めます。と同時に額の真中に激痛が走ります。何事が起ったのかと寝ぼけ眼で辺りを確認してみれば両手でお腹を抱えながら声も出せないくらいに笑い転げる妻が枕元に立っています。私はとても驚きましたが枕の横に転がった目覚まし時計を見てすぐに状況は飲み込めました。

たまたま目覚ましより早く目を覚ました妻が気を利かせて目覚ましのスイッチを切ろうとして持ち上げた目覚し時計を誤って私の頭上に落っことしたのです。『なるほど、確かに目覚し時計だな』まだ完全に目覚め切っていない意識の中でそんなことを思ったのを覚えています。


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