362−鏡

勘違いや見間違いをしてその間違いに気づいているにもかかわらずその正解が見つからないでいる時の時空が微妙に歪んだ感じは大好きなのですが、どう考えてもそれが錯覚や幻覚ではない場合はさすがにショックを受けます。


30代の頃に単身赴任の形でほぼ7年間福岡で仕事をさせていただくのですが、寝泊まりは会社の敷地内にある寮を使わせてもらっていました。ある日、急ぎの仕事を2日間の徹夜で仕上げて寮に戻ったのが夜の8時頃です。

シャワーも食事も仕事場で済ませていましたから寮に戻れば寝るだけなのですが、いつもの癖で2階の自分の部屋に行く前に1階にある洗面台の鏡を覗きます。


驚いた事にその時鏡に映った顔は自分の顔ではなかったのです。最初はいつものように不思議な現象を楽しんでいたのですがあまりにもリアル過ぎて恐くなります。

2日間の徹夜の疲れがそうさせているのだとは思いましたが鏡の中の色彩のトーンがほとんど白黒の状態なのが妙にリアルで気持ち悪いのです。

しばらくは手で顔のあちこちを触りながらいろんな角度で映してみるのですがどう見ても他人の顔なのです。


『おそらく疲労から来る幻覚なのだ』とは思うのですが、幻覚を見ている時には脳が錯覚しているので本人はそれを幻覚だとは思えないのです。

もしかすると幻覚ではない可能性もあるのですが、そういう時は無理やり幻覚だと思い込むようにしています。

そうでもしないと鏡に映ったものが少し遅れて動くのをどう説明して良いのかわからないからです。



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