303−救急車

東京時代に渋谷で偶然友達に会います。

1年ぶりの再会でしたのでそれなりに盛り上がり、その日はそのまま彼の家にお邪魔することになるのですが、初めてお目にかかるオメデタの奥さんの体調が優れず、早々に失礼しようと思っている矢先におなかを押さえて苦しみ出します。

結局奥さんは救急車で運ばれることになるのですが、なぜか私も救急車の中に押し込まれます。

友人は自家用車で救急車の後から付いて来ていたらしいのですが、なぜだか私が奥さんの側に付く破目なってしまったのです。


救急車の人「名前は?」

私「××と言います」

救急車の人「下の名前は?」

私「はい、タカシです」

救急車の人「…あなたの名前じゃない、患者さんの名前です」

私「ああ、ええと…まだ聞いていないのです」

救急車の人「聞いてないって…奥さんの名前ですよ!」

私「だから会って30分も経っていないのでまだ名前も聞いていないのです」

救急車の人「…おたくどちらさん?何で乗って来たの?」


30分前まではまさか無理やり救急車に乗せられた挙句に救急車の人に怒られるとは夢にも思いませんでした。

結局激痛に耐えながら奥さんが全ての質問に答えたのですが、私は会って30分しか経っていない友人の奥さんの手を両手で握りしめながらまだ見ぬ新しい命の無事を祈り、少し涙ぐむという何とも不思議なシチュエーションの中、なぜか生まれて来る子供の名前(男なら救太郎)まで考えていました。

診察の結果、ただの食べ過ぎとわかった帰りの車の中でそれ以上は笑えないだろうというほど3人で笑い転げたのでした。


コオロギのアトリエhttp://korogi.s1.bindsite.jp/