298−金粉

昔からの知り合いの奥方が不思議なパワーを持っているということは何となく感じていました。

このあいだ用事で彼を訪ねたときに、たまたまその奥方が私の『気』の流れを調整してくれると言うのでお願いしたのですが、彼女は左手で私の左手首を握り、右手の人差し指で私の額と左手の手のひらを

交互に何度も触れながら「調子のいい時は手のひらに金粉が出ることがあるのよ」と言います。


付き合い上、表面的にはそのような神秘的な現象を見てみたいと期待しているような演技はしましたが、内心はもし手のひらに金粉が出たとしてもそれは彼女が身に着けている洋服か化粧品に含まれた金色の何かが何かの拍子に私の手のひらに付着するだけのことだろうと思っていたのです。


かなり長時間頑張って頂いたのですが残念ながら私の手のひらには何の変化もありませんでした。

ちょっと決まりが悪かったので逆に1粒か2粒でも金粉が付着してくれた方が流れ的には都合が良かったのにと思いながら気まずい雰囲気の中、何気なくそれまで握りしめたままだった右手を開いて驚きました。


手のひら全体が金粉でキラキラ輝いていたのです。


「ほ、ほらね、で、で、でたでしょ?」


その量の多さに私よりも彼女の方がビックリしていたようでした。


コオロギのアトリエhttp://korogi.s1.bindsite.jp/