128−鍵−2

アーティストのKさんと由布院に出かけた時に体験した出来事です。

その日の目的はKさんの展覧会の打ち合わせだったのですが、思いのほか早く終わったので、由布院の町をあれこれ探索したあと最終的にKさんの行きつけのおしゃれな喫茶店でのんびりさせて頂きました。

良い時間になり、そろそろ引き上げようと駐車場に戻ったときに車のキーがないのに気づきます。

茶店に置き忘れた様子はなく、歩いた道のりを引き返しながら、どこかに落としたのではないかとしばらく探してみたのですが結局見つかりませんでした。

予備の鍵など持っていませんし、どうしたものかと途方に暮れていると、突然Kさんがカバンの中から古びた鍵を取り出します。

所々錆びてはいましたが明らかに車の鍵で、どうしたのかと訊ねると2〜3日前に図書館で拾ったというのです。

その鍵を試しに使ってみろと言うので冗談のつもりで車のドアの鍵穴に差し込んでみたのですが、信じられないことにドアが開いたのです。

意味がわかりませんがエンジンもかかってしまいました。

どういうことかとKさんに訊ねてもKさんはニコニコしながら「経過など別にどうでもいいじゃない、結果が思い通りになったのだから…」と言うだけで特に驚く様子もありません。

その不思議な出来事に帰りの車の中で私のテンションは上がりっぱなしでしたが、その鍵はその後も普通に使わせて頂きました。


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