472−不思議な話

この『不思議な話(ニーマンのピク詰め)』というブログを数年前に始めた時に漠然と思っていた『最後の記事はどんなのだろう』という答えがこの記事なのはチョット不思議な感じがします。

振り返れば良くもまあ470話も書いたものだと思いますが、さすがにネタも底をつき、内容もマンネリ化してきたようですのでこの辺で『不思議な話(ニーマンのピク詰め)』は終了と言うかとりあえずお休みさせていただきます。

また不思議な体験が溜まりましたらその時は『不思議な話(ニーマンのピク詰め)スペシャル』という形で復活も考えておりますのでどうぞその折はよろしくお願いします。永い間お付き合いして頂いた読者の方々には心から感謝しております。

ありがとうございました。それではごきげんよう、さような…そうそう忘れていました。

2012年6月9日より不思議な話(ニーマンのピク詰め)ー復刻版Rーを再開しましたので良かったらそちらも覗いて見ださい。内容は同じですが挿絵入りで少し読みやすくなりました。

http://blog.livedoor.jp/korogi378/どうぞよろしく。




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471−マジシャン

小さい頃の夢はマジシャンになることでした。当時はマジシャンではなく手品師と言っていたのですが、初代引田天功辺りからマジシャンという呼び方がメジャーになって来たように思います。たまたまテレビで見たマジックショーに感動したのと、たまたま近所にマジックを趣味にした中学生がいたということもあって、俄然マジックに興味を持つのですが残念ながら元々あまり賢くない方ですからマジックと念力の違いが良くわかっていませんでした。

その辺を面白がってその中学生も私をからかうものですから完全にマジシャンとは超能力者のことだと思い込んでしまいます。
そんなある日の事いつものように例の中学生のマジックを見せてもらいながら感動していると、私にもやってみろと言いながらピンポン玉より一回り小さなスポンジで出来た赤い丸い玉を渡されます。

その日の中学生のマジックは右手の中に握った赤い玉が気合いもろとも左手に移動するというものでしたので私もそれを真似て赤い玉を右手に握るのですが種や仕掛など全く頭にないですからただひたすら移動する事を念じるだけです。そんな時、突然中学生が「ハイ!」と大声を出した後「玉はすでに左手に移動している」と言うものですから恐る恐る右手を開いてみます。

するとなぜか右手の赤い玉は消滅していて何と半信半疑で開いた左手に赤い玉が移動していたのです。その時は中学生のパワーが私の手のひらの中で作用したのだとばかり思っていましたから感動というよりは感心していたのですが中学生は明らかに動揺していました。

「も、もう一回やってみて」と言われその後同じ事を20回以上やらされましたが二度と同じようには出来ませんでした。それが中学生のマジックだったのか今でもわかりませんがその後その中学生がマジックを見せてくれる事はなくなりました。


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470−飛行

もうひとつ幼稚園の時のお話です。自分ではそれを夢だと思っていたのですが、なぜか周りの人がそれは事実だと言いうものですから仕方なくそれを事実だったのだと思い込んでしまっている事があります。それは風の強い日に50メートルほど『飛んだ』という事です。

その日は休日で朝から小雨が降っていました。どうやら台風が接近していたようで徐々に風も強くなってきていたのですがお昼前に母親にお使いを頼まれます。後で考えると何とも無謀な母親だと思うのですが当時はどこの家庭もそんなものでした。黄色の傘と黄色のレインコート(と言ってもビニール製の合羽ですが)を着てお揃いの黄色の雨靴を履いて外に出るのが嬉しくてしょうがなかったものですから喜んでお使いに出かけます。

300メートルほど離れた商店までは下り坂になっていて、家と商店のちょうど中間辺りの小さな神社に沿って左側をカーブするような坂道でした。神社の手前に用水路に架かった短い橋があるのですがコンクリートで出来た欄干が明るい空色のペンキで塗装された通称『青い橋』と呼ばれるその橋を渡り終った所で突風にあおられます。傘を差したまま左に回転しながら上昇していると確認できたのは建物の屋根の全体を上から見下ろすことが出来たからですが生まれた初めて見る神社の屋根瓦の銀色に近い灰色にとても新鮮な印象を受けたのを覚えています。

どのくらい宙に浮いていたのかはわかりませんが気がついたらその坂道の随分先まで飛ばされており、回転の影響で着地の時に派手に転んでしまいます。怪我や痛みはほとんどなかったのですがお気に入りの傘を壊した事にショック受けている所に商店のおばさんが血相を変えて駆け寄ってきます。「大丈夫?怪我はないの?どこか痛い所はないの?」と矢継ぎ早に来られるものですから逆にここは状況的には泣かなければいけない所のだと思い泣いてしまいます。

という夢を見たのだとばかり思っていたのですが、後に商店のおばちゃんと神社の隣の人と母親の話を総合するとどうも50メートル程飛んだのは事実のようで、商店のおばちゃんはたまたま商店の外に出た時に空から落ちて来る私を見つけて慌てて駆け寄ったと言い、神社の隣の人はトイレの窓から黄色い子供が上空を飛んでいくのを見たと言い、母親は私に持たせるお財布を忘れた事に気づき青い橋の所まで追いかけて来た時に私が空に舞い上がるのを見たと言うのです。

もしかしたらそこまでが夢だったのかも知れません。


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469−オブジェ

幼稚園で思い出しましたが幼稚園時代の初期の頃に幼稚園の建物の一部を修理か増築かの工事をしていた時期があり、業者の方がセメントを使うのを見ているのが大好きでした。オジサンがブリキの箱の中でセメントの粉と砂に水を足しながら混ぜるのがたまらなく面白かったのです。

それが後にカチカチに固まる事が不思議でたまらず、ついにはオジサンの目を盗んで片手でつかめる位の量のセメントをグランドの反対側にある小学校の体育館の入り口のコンクリートで出来た3〜4段の階段の一番上の左脇に小山のように盛るのですが翌日にはもうカチコチでした。色的にはグレーでしたが造形的には正しくウンチで子供心に非常に上手く出来ていると思いました。

そのオブジェは小学校を卒業するまでそこにあり、最初の頃は先生方がそのオブジェを取り除こうとしていたのを何度か見ましたが、下地のコンクリートと完全に一体化してしまい、その内にそれはいつの間にか異物ではなく建物の一部として皆に認められてしまうのですが、そこにある事が当たり前になってしまったそのオブジェを目にする度に造形が持つ不思議なパワーを感じていました。造形には平面の絵画とは別の圧倒的な魅力がある事を知ったのはそれが最初でした。


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468−足跡

幼稚園の時のお話です。幼稚園時代はそれなりに楽しく過ごさせてもらったのですが、ひとつだけ不思議な事と言うか納得のいかない出来事がありました。一クラス(当時は『組』と言っていました)20人位が『赤』『青』『黄』の3クラスに分かれていて、私は『黄組』でした。

訳のわからない年頃ですから休み時間に土足で教室の中を駆け回るなどは日常茶飯事で先生も余程の事がない限り大目に見てくれていました。ところがその日は少し様子が違いました。授業が始まった時、先生の座る紺色のベッチン仕立ての椅子の上にシッカリと靴の跡が付いていて、その犯人が名乗り出なかったという事で急きょ犯人探しとなるのです。

私は犯人がA君だと言う事は知っていましたが告げ口はしませんでした。園児達は右の靴だけを手に持って一列に並ばされ、ひとり々靴の大きさと裏側の模様をチェックされるのですから自ずとA君の犯行であることが立証されるのは時間の問題だと思ったからです。ところがA君より先に順番が回って来た私の靴の大きさと模様がピッタリ一致してしまうのです。

「犯人はあなたですね!何で正直に言わないの!先生は土足で椅子に上がった事を叱っているのではないの、嘘をつく事に怒っているのよ!」

それは々すごい剣幕でまくし立てるので内気な私は何も言えませんでした。途中で『何か言う事はないの』と言われた時に「…A君が…A君の…」と言った途端、人のせいにするのは人として最低な事なのだと更に怒りに拍車がかかり私は泣くしかありませんでした。「わかればいいのよ」と言われても何とも不条理な結果にただ悔しいばかりで、世の中にはとんでもなく理不尽な事があるのだと言う事を生まれて初めて身にしみて感じました。

そのベッチンの深いブルーの色と靴の底の模様は今でも覚えています。


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467−隅っこ

その公共施設は絵画をはじめ、世界中のありとあらゆる美術品や工芸品を紹介してくれる施設です。建物内部は大きく分けて三つの展示空間から成っており、小さな部屋を挟んで両サイドに大きな部屋がひとつずつあります。小さい部屋と言っても20畳以上の広さはある立派な空間なのですが何故かその真ん中の部屋がどうも苦手で、長時間その部屋にいる事が出来ないのです。

ある時その施設で京都かどこかの国宝級の仏像の展示があるというので見せて頂くのですがそれが真ん中の部屋だったのです。
数十体の仏像が展示されたそれは見事なものでしたがやはりどうも落ち着かないのです。仏像と言う特殊な美術品と言う事もあったのでしょうがどうにも落ち着かず早々にその部屋を出るのですが慌てていたせいでその部屋の出口(入り口)でお坊さんとぶつかってしまいます。展示物が展示物だけに多くの宗教関係の方が観覧していたようです。

「左の奥の隅ですな…」

入り口で合掌したまま直立していたお坊さんはひとりごとのようにそう言うとその部屋の左奥の隅に向かってブツブツと念仏のようなものを唱えていました。そこに何があったのかは知りませんが『やはりプロには見えるんだ』と感心したのを覚えています。


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466−オカリナ(後)

恥ずかしいやら情けないやらでしたがそのままにしておく事も出来ず雨に濡れながら砕け散ったオカリナの破片を拾い集めるのですが、破片を拾いながら『普通ならここで偶然お金を拾うとかオカリナの中から小さく折り畳まれた一万円札が出てくるとかあるのに…』などと考えるのですが、そんなことは一切ありませんでした。

アパートに戻りオカリナの破片をつなぎ合わせながらそれでも何かを期待するのですが、何にもないという事が逆に不思議に思える程何もありませんでした。その日、生まれて初めて『ちゃんとしよう』と思いました。


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